研究概要 |
LMO2はヒトT細胞リンパ性白血病に特徴的な転座部位からクローニングされた遺伝子である。筆者らはキメラマウスとgene targeting の手法を組み合わせて、LMO2はyolk sac における造血(一次造血)のみならず成人型の造血(二次造血)の開始にも必須の遺伝子であることをあきらかにしてきた。この遺伝子はタンデムに並んだ2つのLIM domainと呼ばれる、蛋白間相互作用に重要なdomainを有する。同じくT細胞白血病の転座部位から同定された蛋白TAL1(SCL)等と強く結合し、それ自身ではDNA結合能を有さないものの、転写因子複合体の一員として働く。LMO2,TAL1を含む転写因子複合体はGATAやLDB1を加えて多量体を形成し、未分化な中胚葉細胞を血液系の細胞に決定付けるマスターコンプレックスとして作用すると考えられる。さらにこの複合体は血液幹細胞において発現し、複合体のメンバーを替えながら血球の初期分化を制御すると考えられる。 我々はこの蛋白間相互作用に必要な二つのLIM domain にmutationを入れてLMO2 mutantsを作成し、このmutantsを各々のパートナーとの相互作用の有無をyeast two hybrid system, mammalian two hybrid system を用いてスクリーニングした。この結果、次のことが明らかになった。(1)LMO2とTAL1,LDB1の結合は、最初のLIM domain LIMIを介する。(2)LMO2とGATA1/2/3の結合は、二番目のLIM domain LIM2を必要とする。(3)今回得られた、LIM2 mutantはTAL1やLDB1とは会合できるものの、GATA1/2/3とは会合できない。このmutantを用いて、TAL1/LMO2とGATAが結合して作られる複合体の生理的機能を探ることができる。
|