研究概要 |
高等植物のG2/M期転写制御に関わるMyb様転写因子(NtmybA1,NtmybA2,NtmybB)に関して研究を行い、以下の二つの項目に関して成果を上げたので、それぞれについて概説する。 (1)NtmybA2の翻訳後調節による転写活性化の制御 NtmybA2はBY2プロトプラストにおいて、MSA elementを含むB-typeサイクリンプロモーターなどを活性化するが、このときA-typeおよびB-typeサイクリンを共発現させることにより、プロモーターの活性化が2-3倍程度増大する。この活性化はdominant negative型cdc2の共発現、およびNtmybA2のC末端領域の欠損により認められなくなることから、CDKによるNtmybA2のC末端領域のリン酸化が転写活性可のコントロールに働いていると予想された。実際にBY2のCDK活性によりNtmybA2のC末端領域がin vitroでリン酸化され、このキナーゼ活性は、細胞周期のG2/M期に特異的に認められた。このことは、A-typeおよびB-typeのサイクリンがCDKを介して、NtmybA2を時期特異的に活性化し、それによりNtmybA2が正のfeedback制御を受けている可能性を示した。 (2)NtmybA1,A2の遺伝子上流域 NtmybA1やA2は自身の遺伝子が、G2/M期に特異的に発現する。これら遺伝子のプロモーター領域にはMSA様の配列が繰り返し存在していたため、自身の遺伝子を活性化するautoregulationが考えられた。これらのプロモーターの細胞周期中での活性変動やNtmybによる転写活性化などを明らかにする必要があるが、今のところ、NtmybA1,A2は(1)自身の遺伝子の転写活性化、(2)標的遺伝子産物による翻訳後の活性化という二つのレベルでのpositive feedback機構が働いており、これによりB-typeサイクリン遺伝子などのG2期での急激な転写活性の増大を可能にしていると考えられる。
|