研究概要 |
1.シャハラズーリー著『比喩と象徴』に関する写本研究とテクストの校訂。(1)Nuruosmaniye, (2)Shehit Ali, (3)Carullah, (4)Laleli, (5)Escorial, (6)Ragip Pasha, (7)Haji Mahmut, (8)Landberg, (9)Vaticanの9写本を詳細に比較検討した結果、同書の写本は(1)(3)(5)(9)と(2)(4)(6)(7)(8)の2系統に分類しうること、前者の系統の方が原本により近く、かつ語法的にもより優れたテクストを伝えていることが明らかになった。そして、この知見をふまえて、(1)(3)(4)(5)(6)の5写本により同書を校訂し、アラビア語のクリティカル・エディションを完成させた。 2.イスラーム照明学派の展開に関する研究。イスタンブールを中心に照明学派に関する文献資料を調査し、その伝存状況と内容とを確認した。その結果、トゥーディー(『閃光の書』註解)やアブハリー(『真理の開示』)などの著作に見られるように、スフラワルディーの思想的影響はこれまで考えられていたよりも早い時期に、またより広範囲に及んでいることが明らかになった。さらに、ムサンニファク(シャールーディー)(『味得の言葉』註解)に見られるように、照明学の伝統とスーフィズムの伝統とが融合している事例も見いだされた。 3.スフラワルディー著『開示の書』の注釈に関する研究。同書に付されたシャハラズーリーおよびイブン・カンムーナの注釈を取り上げ、同書の中心問題の一つである「自己意識」がいかに解釈され受容されたかを具体的に明らかにした。また、従来の見解とは異なり、イブン・カンムーナの注釈の方がシャハラズーリーのものよりも時期的に先であり、後者は前者の影響を強く受けていることを明らかにした。
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