研究概要 |
本研究では、映像視聴能力の育成を目指した教員養成プログラムの開発の一貫として,学習者を対象とした映像教材の構造に着目した分析的視聴に関する実験を通して、その条件として,「キーショット」、「キーワード」及び「タイトル」のどの条件が組み合わされたときに、より有効な関連構造図を描くことができるかを比較検討した。また、構造図の描画にパーソナルコンピュータの映像編集機能を活用する方法として,関連構造図描画システムの開発をした。 本研究では、映像教材の要素である個々のシーンの関連性に着目して、教材の構成を分析的に捉え、その結果から、制作意図の把握や映像の表現技法・工夫を理解することが可能であるという仮説にもとづき、次のような前提により、映像視聴能力を育成できると考えた。(1)映像教材は、一つのメッセージを伝える映像の最小単位である「シーン」により構成されている。(2)シーンの持つ意味や特徴は、そのシーンを代表するショットである「キーショット」、そのシーンを代表することばである「キーワード」、及び、そのシーンに付与する「タイトル」で表現することができる。(3)抽出した「キーショット」、「キーワード」及び「タイトル」の相互の関連を考え、言葉を用いて各シーンを結びつける。さらに、その結びつきから、意味のある単位毎にまとまりをつくり、関連づけることで構造図を描くことができる。(4)上記の手順により、映像教材の構造に着目した分析的視聴と内省的振り返りによって教材全体を貫く主題、制作意図及び表現技法の把握と理解をすることができる。以上のような前提に基づき,NHK学校放送番組10min.ボックス「遺跡発見三内丸山遺跡」(1998.4.20放送、10分)を用いて,教員養成大学の2年生80名を対象とした実験を行なった。 その結果,キーショット、キーワード、タイトルを組み合わせることにより、映像教材の主題、制作意図、及び表現技法の把握と理解に有効な関連構造図を描くことができることが示された。また,パーソナルコンピュータ上での作業を可能にすることで、編集作業の効率化、構造図の一意性の保証、構造図作成過程評価の実現が期待して,パーソナルコンピュータの映像編集機能を活用した関連構造図描画システムを開発した。学生を対象に試行した結果、有効に機能することが示された。
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