研究概要 |
本研究の目的は,大学生における中級レベルの情報活用能力を測定する尺度の開発と,その測定尺度を試行的に用いて,文科系学生を対象とする中級レベル情報処理演習授業の学習成果の検討を行うことであった。大学1回生60名と,2回生以上で教科「情報」の教員免許科目の履修者39名を調査対象者にして,試作された中級レベル情報活用能力測定尺度(22項目)と,小川・浅川(1991)によるコンピュータ不安尺度(CAS)を,2001年10月上旬と2002年1月下旬の計2回実施した。中級レベル情報活用能力測定尺度に関して,因子分析を行ったところ,(1)アプリケーションソフト活用能力に関する因子,(2)情報操作能力に関する因子,(3)プログラミング能力に関する因子,という3つの因子が抽出された。また,調査時期と学年別に,各項目別の完全通過率を調べた結果,通過率は1回生よりも2回生以上の方が高くなっていて熟練度の違いを反映しており,中級レベルにおける情報活用能力の差異がある程度うまくとらえられていた。調査時期での違いを比較すると,本尺度項目でとらえられる中級レベルの能力についても,学習の進展によってある程度向上が可能であることを示していた。以上のような結果より,今回作成された中級レベル情報活用能力測定尺度は,全体としては実用可能な範囲のものであることが示された。中級レベル情報活用能力測定尺度得点とコンピュータ不安得点との間には,-0.6程度の負の相関が認められ,さらにコンピュータ不安の高低別に群分けをして,調査時期,学年ごとに,同測定尺度得点を調べた結果,(1)コンピュータ不安の高い人が中級レベル情報活用能力は低い,(2)不安の高低にかかわらず,熟練度の違い(学年の違い)による情報活用能力の差が明確である,(3)10月から1月の間の学習の進展に伴って,いずれの群においても能力の向上がみられる,ということが明らかになった。
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