研究概要 |
研究の概要(江戸時代讃岐の歴史素材の電子化とマルチメディア型データベースの作成) 本研究では,香川(讃岐)地域の歴史素材のデータベース化とマルチメディア型歴史学習教材の開発を試みた。歴史学習の目標は,過去の正確な理解を通した現在の認識と,未来への確かな指針を得ることにある。ところが,小・中学校の歴史教育は,現在の政治状況の複雑さを反映し,時として国民的な論争の的にもなっている。また,通史を中心にする現行の教科書による学習では,実体験に乏しく,ともすれば暗記科目で魅力に欠ける教科になりかねない。 江戸時代は,中世と現在の橋渡しの時期で,歴史資料も豊富であり,たとえば城跡や城下絵図からは,現在社会にその影を色濃く残していることも読み取れる。温暖,少雨の香川地域は,弘法大師が築いた満濃池をはじめ,今も多くのため池をもち,それぞれの池には地域固有の言い伝えとも結びつき,讃岐の風物に彩りを添えている。ここでは、江戸時代讃岐の歴史を物語る城跡,絵図や各種の歴史資料の電子化を試み,マルチメディア型データベースに整備した。本データベースを利用する歴史授業を実施した。 授業実践(附属高松中学校,協和中学校) 今回の授業実践は,香川大学附属高松中学校と高松市立協和中学校でそれぞれ小単元「21世紀に伝えたい江戸時代の讃岐」と「さぬき水物語」を企画した。「21世紀に伝えたい江戸時代の讃岐」は,讃岐を代表する風物詩「お遍路さん」を導入として,讃岐の先人,弘法大師や四国88カ所参りを題材とした。本授業では,生徒自らが地域社会との係わりを自問自答しながら,生活社会への関心を喚起する。一方,「さぬき水物語」では,ため池づくりを題材にして,現在の公共事業・政策までにもいたる諸課題を考察させた。生徒のアンケート分析から,本研究のようなマルチメディア教材は,学習者の学習意欲を喚起することが認められた。
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