研究概要 |
Helicobacter pylori菌の表面タンパク質として発現し、生体内尿素をアンモニアに変換することにより胃内で同菌の生存を支えている重要分子のウレアーゼを特異的に攻撃する抗体酵素を作製する事が本年度の研究実施計画の主要な点であったが、以下に示す事が明らかとなった。 (1)抗Helicobader pylori urease体のうち、HpU系列ではこれまでに、HpU-1,2,9,10,17,18,19,20を、また、UA系列ではUA-1,7,9,15について解析を行った。その結果、HpU系列に関してはHpU-1,9,18,20に触媒三つ組み残基様構造の存在が推定された(UA系列は現在、立体構造を構築中)。 (2)HpU-2および-18はHelicobader pylori菌のウレアーゼα-subunitのアミノ酸配列183-204および183-195をそれぞれ認識する。そこで抗体による抗原分解実験では、183-204に対応する配列SVELIDIGGNRRIFGFNALVDR(エピトープペプチド)を化学合成し、これを用いた。その結果、HpU-9軽鎖は急速にペプチド抗原を分解した。分解産物をMassで調べたところ、非常に多くのペプチド分解断片を確認した。 (3)また、HpU-18軽鎖上記と同じ条件で混合したところ、約80時間の誘導期を経た後、やはりペプチド抗原の分解が始まり、約110時間で同ペプチドは反応系から完全に消失した。エピトープペプチドを再添加すると、誘導期を示さずただちにエピトープペプチドは分解され26数時間で完全に消失した。分解産物にはやはり、多くのペプチド分解断片が存在した。 以上の結果およびこれまでの結果を合わせると、触媒三つ組み残基様構造とペプチダーゼ活性とがかなりの相関を持つことが判明した。
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