研究概要 |
生体防御遺伝子の転写制御領域にレポーター遺伝子をつないだ遺伝子を導入したショウジョウバエの幼虫を用いて,β-galactosidaseの産生を間接定量することにより自然免疫制御物質をスクリーニングする実験系を構築した。しかしながら,本スクリーニングでは,自然免疫に特異的に作用する物質に加えて,細胞毒性あるいは転写や翻訳阻害作用を有する物質も探索されることがわかった。そこで,自然免疫以外の作用機構によってβ-galactosidaseの産生を制御する物質を排除するために,(1)培養昆虫細胞を用いたスクリーニング(細胞毒性),(2)熱刺激によってβ-galactosidaseの産生が誘導される外来遺伝子を導入したショウジョウバエを用いたスクリーニング(転写・翻訳阻害作用)を確立した。 次いで,これらのスクリーニングを用いて自然免疫抑制物質の探索を行った。すなわち,159種の放線菌・糸状菌を培養して,その抽出物についてスクリーニングを行った。その結果,6種培養微生物抽出物が自然免疫に対して特異的に抑制作用を有すると判断した。さらに,6種のなかの1種である糸状菌を大量培養して得た抽出物を,スクリーニングを併用して活性成分を精製したところ,TP-1と仮称した成分が活性物質として単離された。TP-1は,自然免疫活性を濃度依存的に抑制する一方,細胞生存率,転写・翻訳活性に対しては全く影響を及ぼさなかった。
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