研究概要 |
1997年、上村、倉本らにより、海産アルカロイドのノルゾアンタミンが、骨粗鬆症の治療に有望であることが報告された。ノルゾアンタミンの塩酸塩は、骨粗鬆症モデルマウスの骨重量の減少、及び骨強度の低下を抑制し、かつ、副作用がほとんどない。骨に対しての作用メカニズムは不明だが、極めて興味深い。 特異な分子構造を有するゾアンタミン類の全合成達成に向けて、(1)C環部の近接した四級炭素(9,12,22位)、(2)置換基の導入を考慮したトランス縮環骨格、の構築がポイントと考えた。分子内溝呂木-Heck反応で、12位を構築しながらB環を閉環するルートを検討したが、立体障害が大きく既存の条件では収率の改善が必要であった。検討の末、β,β-二置換エノンを用いて四級炭素を構築する独自の手法を開発し、高収率(84%)でABC環部を合成できた。トランス縮環(B/C環部)骨格の構築と9位メチル基の導入には、ヨウ化サマリウムを利用して、近接四級炭素を立体選択的に構築した鍵合成中間体の合成に成功した。さらに、二重結合を酸化開裂後、ゾアンテノールの官能基を全て導入した基質を合成できた。世界初の全合成は目前である。 北里研究所の林と共同でIL-6依存性MH60細胞の増殖抑制活性試験を検討した。IL-6活性阻害にはCDEFG環部を塩酸塩とした構造が必須である可能性が示唆された。
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