研究概要 |
ヒガンフグ(Fugu pardalis)血漿中に、テトロドトキシン(TTX)及びサキシトキシン(STX)と結合する糖蛋白質(pufferfish STX and TTX binding protein : PSTBP)を見い出し、フグの毒の体内輸送、蓄積や代謝に関与するのではないかと考えた。PSTBPとの結合におけるTTX, STXの相互の競合的結合阻害について、及びNMRスペクトルを用いたdcSTXとPSTBPの結合状態の解析を行った。 1)TTX, STXの相互の競合的結合阻害について STX標品、TTX標品及び精製PSTBPとSTXs, TTXsの蛍光HPLCを用いて相互の結合阻害実験を行った。その結果、TTXのIC_<50>は、81±16μM(n=2)であった。また、同様に濃度一定のTTX(1.6μM)とPSTBP(1.2μM)に濃度可変のSTXを加えて同様の操作を行って求めたSTXのIC_<50>は0.35±0.057μM(n=2)であった。もし単純な競合結合であるならば、TTXのIC_<50>(81μM)から予想されるSTXのIC_<50>は、0.0093μMであるが、実際は38倍大きかった。この結果より、TIX、STXのPSTBPとの結合が単純な競合モデルでは説明できないと考えられた。 2)NMRスペクトルを用いたdcSTXとPSTBPの結合状態の解析の試み STXの同族体のC1,C2を生産する、淡水産らん藻に^<13>CラベルCO_2存在下で培養し、^<13>Cを取り込ませたC1,C2を生産させた。化学変換によりSTXと同等にPSTBPと強く結合するdcSTXを調製した。ラベル化dcSTXに、徐々にPSTBPを加えてdcSTXの^<13>C及び^1Hのケミカルシフトの変化をHSQCで追跡したところ、dcSTXのシグナルの検出感度が低下しdcSTXのクロスピークは完全に検出不可能となった。dcSTXがPSTBPと弾く結合し、PSTBP中に完全にはまりこんだことにより、T2が減少して感度が低下したと考えられた。
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