研究概要 |
(1)変形菌の採取と発芽実験:福井県他で採取した変形菌の子実体および菌核について胞子の発芽実験を行った.実験に用いた野外株のうち33%において発芽に成功した.その中の数株については変形体の形成や子実体の形成が観察された.とくにDidymium属,Physarum属は発芽しやすく,変形体・子実体も他の属に比べて形成しやすいことが明らかとなった. (2)Physarum rigidumの培養変形体の成分:本菌の寒天平板培地上での変形体の大量培養を行い,抽出物を各種クロマトグラフィーにて分画した結果,3種のポリエン型色素成分を単離した.この他にも多くの色素成分が含まれていたが,溶解性や安定性等の問題があり,分離精製にはさらなる注意を要することが判明した.本菌以外にも化学成分研究を行うために,Physarum melleumおよび菌核(Badhamia sp.と予測された株)の大量培養を行った.Physarum melleumには抗菌活性をもつ黄色色素が含まれていることが判明し,詳細な分離精製を行ったが,精製した化合物には溶解性や安定性等に問題があることが分った. (3)野外採取変形菌の成分:変形菌Lindbladia tubulina(フンホコリ)より昨年度にひきつづき色素成分の探索を行い,dihydrolindbladioneおよびその類縁体2種を単離した.また,Cribraria intricataの主要赤色色素成分もlindbladioneであることが判明した.一方,Cribraria purpureaからは枯草菌に対する抗菌活性をもつ赤色色素cribrarione Aを単離した.
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