研究概要 |
生体内には,スペルミジン・スペルミンに代表される20種を超えるポリアミン類が存在し,これらは前立腺,膵臓,がんなど分泌活性やたんぱく質・核酸合成の盛んな組織中に多く含まれている.これらポリアミン類の機能は,核酸の安定化,核酸合成系の促進作用,細胞膜の安定化や化学物質の膜透過性の強化など多岐にわたっており,種々の生物現象の鍵物質となっている.本特定領域研究では,ポリアミン類の作用機序・生物現象の解明および探索を目指し,ポリアミン類の生体内機能制御分子を創製することを目的とする.この検討では包接化合物による錯形成を鍵とした超分子化学的手法を用い,ポリアミン包接錯体の構造活性相関研究を行う.包接化合物として,ポリアミンと選択的にロタキサンを形成するクカビト[6]ウリルに着目し,(1)その機能探索および(2)類縁体合成手法の開拓を行った.平成13年度までに無置換クカビト[6]ウリルがポリアミンの核酸関連機能を変化させることを見いだしている.今年度は一連の置換クカビト[6]ウリルの合成を可能とする合成手法の開発を行った.クカビト[6]ウリルはその最初の合成からほぼ100年を経た今でも置換体の合成手法がなく,最初の多置換クカビト[6]ウリルがわずか2%生成することが昨年報告されたのみである.本研究ではクカビト[6]ウリルの出発物質であるグリコールウリルの混合物を合成反応に用いることで置換体が比較的よい収率で得られることを見いだし,さらにポリアミンを包接したロタキサンへと変換できることを見いだした.
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