研究概要 |
本研究は異種生体防御ペプチド間の相乗効果発現機構を解明することを目的としている.昨年度は生体防御ペプチドmagainin2とPGLaのヘリックスが膜中で平行な1:1会合体を作ることを明らかにした(Biochemistry40,12395(2001)).今年度は,この会合体超分子をC末端に導入したGly-Gly-Cysリンカーを介してジスルフィド結合により架橋固定し,ハイブリッドペプチドを合成し,生体膜や脂質膜との相互作用を調べて,相乗効果のメカニズムについて検討した.大腸菌や黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性やヒト赤血球に対する溶血活性はmagainin2,PGLa単独に比べ,1:1物理的混合物では大きな相乗効果が確認され,また,ハイブリッドペプチドでは物理的混合物とほぼ同等かそれ以上であった.ホスファチジルグリセロール(細菌膜モデル)およびホスファチジルコリン(赤血球膜モデル)リポソームを用いた膜透過性亢進実験でも同様の結果が得られたことから,作用点は膜であると考えられる.ハイブリッドペプチドのFTIRスペクトルのアミドIバンドから,膜中でヘリックス構造をとっていることが確認された.以上の結果から,magainin2とPGLaの相乗効果の発現機構は,膜中で平行ヘリックスからなる高活性超分子が形成されるためであると考えられる.また,magainin2が膜中で逆平行ダイマーを作ることもNMRにより明らかにした.さらに,環状β-シート構造を持つtachyplesin Iにはリポ多糖を特異的に認識する能力があるが,ヘリックス性のmagainin2にはこうした能力はないことも見いだした.
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