研究概要 |
本研究では,我々がこれまでに開発したさまざまな固体NMR法を用いた実践的な分子の3次元構造(立体配座)決定法を確立する.平成14年度は,まず,分子運動の影響を除くための低温測定システムを導入し,性能の検討を行った.それと平行して,構造が決定されているテスト試料として,炭素と窒素を全て炭素13と窒素15でそれぞれ置換したN-アセチル-L-プロリルグリシル-L-フェニルアラニンを固相法を用いて合成した.この試料に対しDARR法を用いた遠隔炭素間距離の一括測定の検討を行い,実験的なパラメーターの最適化を行っている.また,原子間距離を用いて分子の立体構造を決定するためのプログラムとしてX-PlorというYale大学で開発されたプログラムを導入し,N-アセチル-L-プロリルグリシル-L-フェニルアラニンで現在得られている多数の炭素間距離による構造決定を行い,本手法で簡便にある程度の精度で3次元構造を得ることが出来ることを示すことができた.現在,このようにNMRで炭素間距離を測定することで得られた構造と,X線回折法で得られている構造との比較を行い,本手法の精度や問題点などの評価を行っている.同時に,構造が決定されていない神経伝達物質の一種であるエレドイシンのC端側6残基(K-F-I-G-L-M)の構造決定を行うために,炭素,窒素をそれぞれ炭素13,窒素15で全て置換したエレドイシンを合成し,炭素13や窒素15の固体NMR信号の帰属など構造決定のための予備的な実験を行った.
|