研究概要 |
生物は外界からの攻撃から身を守るために,自らの細胞の一部を死滅させることによって自らを防御する機能(=アポトーシス)がプログラムされている。本研究では,植物細胞がモノテルペノイドなどによる化学ストレスを受けた際にアポトーシス様細胞死を発現する機構を解明するために,化学ストレスの認識過程とアポトーシス実行の鍵となる生体反応について調べた。 (1)タバコ培養細胞から調製したプロトプラストに標識ゲラニオールを加え,ゲラニオールの細胞内局在性を調べた。その結果,細胞外から加えたモノテルペノイドは細胞内の小器官へはほとんど到達せず,細胞膜上に蓄積されることがわかった。そこで,細胞膜上のモノテルペノイド受容体の存在を明らかにするために,タバコ培養細胞の細胞膜タンパク質を検索し,ゲラニオールと特異的に結合するタンパク質を得た。 (2)カミツレ培養細胞にゲラニオールを投与し,投与直後に変化するタンパク質を調べた。小胞体に存在するカルレティキュリンがゲラニオール投与直後に分解することがわかったので,さらに,アポトーシスの際にカルレティキュリンが小胞体からどのように消失していくのかを抗カルレティキュリン抗体を用いて調べた。その結果,カルレティキュリンは通常小胞体に残留しているが,そのHDEL配列が切断されると,核内に移行することがわかった。 (3)カミツレ培養細胞を対象にして,遺伝子レベルでゲラニオール応答因子の検索を行った。その結果,培養細胞にストレスを加えると,まず転写因子(McGRF2,McGRF6)が発現し,その後McGRF2によってGSTなどの防御タンパク質が発現し,防御応答の実行過程でMcGRF18が各種タンパク質の分解調節を行うことがわかった。
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