研究概要 |
我々は、これまでの研究でメダカ(Oryzias latipes)産卵群(雄3尾、雌12尾)にトリブチルスズ(TBT)とPCBsを複合投与すると、相加的に作用して産卵が低下することを報告した。本研究では、この作用機構を明らかにするために以下の実験を行った。 メダカペア(雌雄各1尾、12ペア)にTBTとPCBsを餌から1μg/g魚体重の割合で単独もしくは複合投与した。その結果、受精卵数はTBT処理区で有意に低下し、さらにTBT+PCBs処理区では有意ではなかったが相加的に減少した。無暴露の雌に対する雄の性行動を調べた結果、TBTが雄の性行動に影響を与えて放精行動を抑制していた。よって、受精率が低下する原因として放精行動の抑制が原因と推定された。一方、PCBsを投与したメダカでは,平常行動(遊泳,壁面回遊)の持続時間が短くなっており、多動的状態を観察した。 さらに、PCBs添加餌料(1,5,25,125μg/g)を投与したメダカ3尾と,PCBs無投与3尾,計6尾で群を形成させ,その群行動を1時間観察したところ、外部からの刺激が無いにもかかわらず,瞬発的にメダカが離散する行動(群の崩壊)が観察された。画像解析により,遊泳速度,転向角を求めてフラクタル次元解析を行ったところ、有意なフラクタル次元の増加が観察された。また,無投与メダカの行動とPCBs投与メダカのそれの間に差はなかった。PCBs混成群において,PCBs無投与メダカはPCBs投与メダカに影響され,群全体が異常な行動を行った。PCBsによりメダカの行動が不安定になることが証明された。 以上の結果から、産卵群においてTBTとPCBsが相加的に作用して産卵が低下した原因として、PCBsにより行動が不安定となり、さらにTBTが雄の性行動を抑制したため、相加的に作用して産卵群における繁殖を低下させたと推定された。
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