研究概要 |
1.Martinリガンドを有するアルキルチオホスホニウム塩とカルボアニオンとの反応については、環状ホスフィナイト[-2-C_6H_4C(CF_3)_2O]P[2,4,6-(i-Pr)_3C_6H_2]を硫黄と反応させ、相当するホスフィンスルフィドを得た。次に、CH_2Cl_2中、Meerwein試薬、Et_3O^+BF_4^-で硫黄上をエチル化し、ホスホニウム塩とした。溶媒をEt_2Oに換えたところ、BF_4^-からフッ化物イオンを引き抜き、相当するフルオロホスホラン[-2-C_6H_4C(CF_3)_2O-]PF(SEt)[2,4,6-(i-Pr)_3C_6H_2]が生成するという興味ある反応を見出した。一方、このフルオロホスホランはCF_3SO_3Si(CH_3)_3によりホスホニウムトリフラートへと変換できた。これにn-BuLiを作用させたところ、予期に反して硫黄上への攻撃が起こり、環状ホスフィナイトが生成することが分かった。2.5配位チアシリラニドの合成については、まず、Martinリガンドを有するビニルシラン[-2-C_6H_4C(CF_3)_2O-]SiPhCH=CH_2とt-BuLiを反応させ、これにスチルベンエピスルフィドを反応させることで、相当するチオールを分離困難な二つのジアステレオマー混合物として得た。混合物のまま、18-クラウン-6存在下KHを作用させたところ、目的のチアシリラニドの生成が^<29>SiNMRにより認められた。X線結晶構造解析の結果、ケイ素-硫黄原子間距離はvan der Waals半径の和より十分短く、ケイ素-硫黄原子間に強い相互作用があり、三員環構造をとっていることが分かった。以上のように、5配位チアシリラニドの合成は達成された。
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