研究概要 |
[4.4.4]プロペランのX線結晶構造解析の結果、ケイ素-ケイ素結合距離は2.295(1)Åであり,通常の結合距離に較べ約2%短いことがわかった。これがHOMOのエネルギー準位を上昇させ(IP:7.96eV),低い電子遷移エネギー(λ_<max>=〜210nm)に反映されたものと推定した.さらに,単結晶中において,この結合軸方向に同じ向きの他分子が積層し,ケイ素-ケイ素結合は一直線上に整列している.分子間ケイ素-ケイ素原子間距離は約4.73Åであり,分子軌道計算により示された,環の外側に大きく張り出したLUMOの相互作用が期待できる範囲内である.実際,単結晶をアルゴン雰囲気下で紫外線照射すると,溶媒に不溶性の白色固体に変化する.環内のケイ素-ケイ素結合切断と分子間の同結合生成を伴う,開環重合物と推定される. プロペランのケイ素-ケイ素結合は,炭素鎖による立体保護にもかかわらずEt_3Si-SiEt_3より数倍速く臭素によって切断され,両方のケイ素原子上で立体の反転したout, out-双環状ビス(ブロモシラン)が生成する.この立体化学は通常のケイ素-ケイ素結合のハロゲン開裂の立体化学(一方で立体保持,他方で立体反転)とは異なり,立体保護の結果と推定される.ビス(ブロモシラン)を金属リチウムで還元すると,環歪みが再生するにもかかわらず,高収率でもとのプロペランのみが生成する.
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