研究概要 |
拡張π電子系のC_8H_4S_8^<2->配位子を有する有機Rh(III)化合物を合成して、その酸化体を得て、Rh-S-C-C-Sからなるメタラ環の反応性をしらべるとともに、その導電性あるいは磁性を検討することを目的としている。 [RhCl_2(η^5-C_5Me_5)]_2と[NMe_4]_2[C_3S_5]あるいは[NMe_4]_2[C_8H_4S_8]との反応によって[Rh-(η^5-C_5Me_5)(C_3S_5)](1)および[Rh(η^5-C_5Me_5)(C_8H_4S_8)](2)を得た。これらは溶液中では[Co(η^5-C_5Me_5)(C_3S_5)]と同様に単量体であるが、固体状態ではRh-S架橋による二量体として存在する可能性がある。錯体1および2の酸化電位は、それぞれ+0.45,+0.70Vおよび+0.16,+0.50V(vs. Ag/Ag+)であり、1については、これに相当するCo(III)錯体[Co(η^5-C_5Me_5)(C_3S_5)]の酸化電位(+0.211V vs. Ag/Ag+)にくらべるとかなり高い。また、2の酸化電位はC_3S_<5->錯体である1の値にくらべて低く、これは他のC_8H_4S_<8->金属錯体においてもみられる。 2を臭素で酸化して[RhBr(η^5-C_5Me_5)(C_3S_5)](3)を得た。Rh(III)核とともにC_3S_5配位子上に不対電子をもったラジカルを含んでいる。溶液中のESRスペクトルは、g=2.017にA_<Br>=32G, A_<Rh>=5Gの超微細構造を示す。2は酸化電位が低いのでヨウ素によっても酸化することができ、[RhI(η^5-C_5Me_5)(C_8H_4S_8)](4)が得られた。ESRスペクトルでは、ヨウ素核とのカップリングも見られる。4ではC_8H_4S_8^<2->配位子中心の酸化が生じ、酸化体の固体状態では、多くの硫黄原子があるので配位子間でのS--S相互作用によって効果的な電導経路が形成されて、高い電導度が期待される。、さらに、2の臭素酸化体も合成し、酸化体の結晶構造とともに、導電性あるいは磁性を検討してゆく。
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