研究概要 |
ピロールを単位構造とする大環状化合物はポルフィリノイドと総称され、その特色ある分子認識能や光機能が注目されている。近年、新しい骨格を有する誘導体が活発に合成されているが、収率や一般性に問題があり、新しい合成ブロックその連結法の開発が急務である。本研究者が最近開発したビスアザフルベンは高い反応性を有し、中性条件下でのポルフィリノイド合成を可能にした画期的な合成中間体である。本研究ではビスアザフルベンの合成、構造反応性を明らかにし、その有用性を示す事を目的とした。 1.ビスアザフルベン誘導体の開発 ピロールのβ位(3位、4位)に異なる置換基を有する3種類の2,2'-ビピロール(MeEt体、EtEt体、i-BuMe体)を用い、ホルミル化、フェニルリシウムとの反応を経て、ビスアザフルベンを合成した。X線結晶構造解析によりフルベン特有の平面構造や結合距離を明らかにした。ピロール3位の置換基の嵩高さは環状化合物の安定性に大きな影響を与えるので、種々の誘導体を合成できたことは大きな成果である。EtEt体の収率が最も良いが(55%)、更に、条件検討を行う必要がある。 2.ビスアザフルベンと2,2'-ビピロールの反応による巨大ポルフィリノイドの合成 2,2'-ビピロール(MeEt体)とベンズアルデヒドとの酸触媒存在下での縮合反応ではピロール6個からなるロザリンのみが70%という高収率で得られる事が知られていたが、MeEt体のビスアザフルベンを用いるとロザリンは全く得られず、ピロール8個の[32]-オクタフィリンが39%で得られた。またi-BuMe体のビピロールの酸触媒反応ではロザリンとオクタフィリンが24%、39%で生成する事も見出した。 3.ビスアザフルベンとオリゴピロールとの反応 ビスアザフルベンはジピリルメタンと反応し、[34]-オクタフィリンを33%の収率で与えた。また、トリピランとの反応によって、サフィリンを37%の収率で与えた。これらの合成収率は従来の合成法によるものを大きく上回るとともに、これらの化合物は特色ある置換パターンを有するポルフィリノイドである。
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