研究概要 |
無保護グルカールに触媒量(1mol%)のPd(OAc)_2存在下、シアン化トリメチルシリルを作用させたところ、2,3-不飽和-1-シアノ糖が99%収率,α/β=75/25で得られた。この系に、ホスフィン配位子を添加したところ、反応は進行しなくなった。一方、無保護グルカールのアリルアルコールを選択的に酸化して得られる無保護ウロースに、1mol%のPd(OAc)_2存在下、シアン化トリメチルシリルを作用させたところ、3-ケト-1-シアノ糖が96%収率,α/β=88/12で得られた。この系に、P(o-tol)_3を添加したところ、α/β=94/6(82%収率)にまでα選択性が向上した。このように配位子の添加がC-グリコシル化反応の立体選択性に影響を与えうることがわかった。また、これらの結果から無保護グルカールの場合は、零価のパラジウムでは触媒活性がなく、2価のパラジウムがルイス酸的に働いていること、それに対して、無保護ウロースの場合には、零価のパラジウムでも活性があることから、別の機構で進行していることが明らかとなった。さらに、ウロースの場合には配位子の添加による立体化学制御が期待できることもわかった。 上記反応において、無保護グルカールからウロース(エノン体)への酸化の際に開発したPd/C触媒を用いる脱水素化反応を複素環化合物に適用した。すなわち、ピラゾリンからピラゾール、ジヒドロピリミジンからピリミジンへの変換を試みたところ、効率よく脱水素化が進行した。さらに、ピラゾリンからピラゾールへの変換はパラジウム触媒なしでも進行し、この場合には、脱水素化でなく、脱水反応が起きていることも明かとした。
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