研究概要 |
アルケン類やアルキン類、芳香族化合物および1,3-ジカルボニル化合物と酢酸マンガン(III)を用いたラジカル反応系に、有機ビスマスを加えた反応を行うことで、含ビスマス複素環化合物の合成を試みた。これまでの研究で、トリアリールビスマス(III)(1)は酢酸マンガン(III)によって容易に酸化されてジアセトキシビスマス(V)(2)となり、続く後処理でジクロロビスマス(V)(3)となることを明らかにした。化合物3の構造はX線単結晶解析によって決定された。化合物1から2への反応は比較的遅いので、1,3-ジカルボニル化合物やアルケン類の存在下同様の反応を行うことで、ビスマスを含む複素環化合物の生成が期待された。反応条件を種々検討したが、残念ながらビスマスを含んだ環化生成物は得られなかった。 次に、シロキサン結合を含む末端ジエン4を合成して酢酸マンガン(III)存在下2,4-ペンタンジオンとの反応を検討した。その結果、シロキサン結合を側鎖に持つ4,5-ジヒドロフラン5が22%の収率で得られた。同様の反応をテトラメチレン-ビス(3-オキソブタノエート)を用いて行ったところ、シロキサン結合を含む15員環化合物6(12%)の合成に成功した。また、副生成物としてモノジヒドロフラン7が得られた。このことから、大環状化合物6の生成は段階的に進行すると考えられる。今後、この反応をさらに検討し、シロキサン結合を含む複雑な化合物の合成を行う予定である。
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