研究概要 |
ラジカル反応は中性条件下で行うことができ,しかも無水無酸素条件を必要としないことや、基質として官能基などの保護が必要でないため、環境重視型有機合成反応として注目されまた重要視されてきている。しかし、これまでに開発されてきたラジカル反応のほとんどのものが有機溶媒中で行われてきており、環境にやさしい反応条件とはいえない。これらの点を踏まえて、本年度は環境重視型ラジカル反応の開発のための基礎的検討と、その反応を活用した多元素環状化合物の合成研究に着手した。 1.液相ラジカル付加閉環反応による複数元素環状化合物の合成 複数の多重結合が炭素、窒素、酸素、硫黄、珪素などの複数原子で連結された基質のラジカル付加閉環反応を検討した。その結果、市販の溶媒や試薬類をそのまま使用してもラジカル反応は効率的に進行し、隣接位が官能基化された複数元素環状化合物が収率よく得られた。また,スズ化合物を用いないヨウ素原子移動反応を用いるラジカル付加閉環反応やラジカル的Mannich反応をはじめて開発した.次にラジカル付加閉環反応によって新たに構築された官能基の変換により、複数元素環状β-アミノ酸や非環状アミノ酸を合成した。今回合成した環状アミノ酸は最近注目されているβ-ペプチド系抗菌薬の構成アミノ酸である。更に、ラジカル付加閉環反応において未解決であった複数の異った種類の多重結合間でのラジカル反応の反応性の比較検討も行った。 2.固相ラジカル付加閉環反応による複数元素環状化合物の合成 多元素環状化合物のライブラリー構築のための基礎的研究として、下記のような市販の樹脂に連結した基質を用いた固相ラジカル付加閉環反応も検討したところ、液相反応に匹敵する結果を得た。
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