研究概要 |
本年度は、我々が以前に提案した多段階プロセスをワンポット化するための新概念Integrated Chemical Processに基づいて1,4-ベンゾジオキサンおよびオキサゾリジノン骨格の簡略化プロセスを開発した。具体的には我々の研究室で永年に亘り検討を続けているCsF触媒存在下での求核剤によるオキシランの開環反応を利用するさまざまな医薬品中間体の合成を取り上げた。本研究ではその他のCsF触媒反応と組み合わせることにより単一触媒による多段階プロセスのワンポット化に取り組んだ。 (1)1,4-ベンゾジオキサンの合成 1,4-ベンゾジオキサン骨格はアドレナリン受容体拮抗作用を有するため種々の医薬品に利用されている。我々はCsF触媒によるグリシドール開環とトシル化反応、および水添反応を連結することにより有用なビルデイングブロック2-トシルオキシー1,4-ベンゾジオキサンを得た。 この反応をさらに改良し、3-メチルカテコールの選択的求核反応、トシル化、アミノ化、アダマンタノイル化をCsF触媒単独で行うことにより抗鬱、抗不安剤のワンポット合成プロセスを完成した。ただし、このようにして得られる1,4-ベンゾジオキサンには若干の光学純度の低下認められた。これは開環反応の際のグリシドールのラセミ化に起因するものであり現在反応条件を精査中である。 (2)オキサゾリジノン CsFがオキシランの開環に有効であることが分かったので次にカルバマートを求核剤とするカルボナートの開環反応による抗菌性を有するオキサゾリジノンの合成を試みた。まず最初に最終生成物に一気に到達することを目指してアセトアミド官能基を有するカルボナートとカルバミン酸エチルエステルを反応させたが満足すべき収率を得ることができなかった。しかしカルボナート化合物の窒素をベンジル基で保護することによりオキサゾリジノンを合成することに成功した。
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