研究概要 |
ペプチド型両親媒性分子は水中・有機溶媒中で会合体を形成する。この会合体はペプチド部位に形成される平行β-シートで構造化されている。β-シート中では構成分子がきわめて規則的に配列しているため,β-シートを集積できればこれまでにない高次規則構造が得られるはずである。本研究ではペプチド型両親媒性分子のペプチド部にロイシンを導入した分子を合成したところ,形成される平行β-シートがロイシンジッパーで連結し,規則構造の固定を行うことに成功した。平行β-シートの形成は,FT-IRスペクトルから確認でき,ロイシンジッパーの形成は,キャストフィルムが比較的高い機械強度と柔軟性とを有することから確認できた。ロイシンを含まない他のペプチド型両親媒性分子から形成したキャストフィルムは自己支持性のフィルムを形成するもののきわめて脆く,柔軟性も無い。また,ロイシンを含むペプチド型両親媒性分子の合成中間体の一部は,テフロンとの親和性がきわめて強く,二枚のテフロンシートを接着してずり方向にきわめて強い接着強度を発揮することも明らかにした。一方,β-シートは形成しないが二次元面内で水素結合ネットワークを形成するグリシン型両親媒性分子を用いても柔軟性に富んだキャストフィルムが得られたことから,二次元面内の分子集合体についてX軸方向とY軸方向を連鎖固定できれば,共有結合によらずとも機械強度に優れたフィルムが形成できることを示している。水素結合によって構造化されたこれらの分子集合体は,プロトンドナーの欠落したペプチド型両親媒性分子を添加することで断片化できることも明らかにした。
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