研究概要 |
S-ペプチドはαヘリックス構造を取ることが既知なので、まずこのヘリックスの極性残基を一つだけIda4に入れ替えたSペプチドをS-プロテインと複合化した。これらの変異体の鉄イオン添加に対する応答挙動を反応初速度から見積もると、Ida4の置換位置の電荷(Glu, ASPかLys, Argかの違い)によって金属イオンによる応答挙動は全く逆になった。即ち本来Lys, Argであった部位のIda4への置換は、鉄イオン添加によって活性が増幅するが、Glu, Aspの入れ替えは鉄イオンによって活性が減少した。蛋白質骨格中に組み込まれたIda4は、中性条件ではマイナス1であるが、3価の鉄イオンを錯化するとプラス1となる。このような電荷の反転が上記のような対照的な挙動の一因と考えられた。より大きな活性変化は二置換体で見られた。6,9-Ida4と7,10-Ida4では全く反対の応答特性であった。速度論解析を行うとこの変化はkcatに依存するものであり、7,10-Ida4では鉄イオンの存在によってkcatにして20倍以上のオンオフ制御が起こった。CDスペクトルで構造変化を評価すると、鉄イオンの錯化によってαヘリックス構造がわずかに巻き戻っていることが示された。このような局所的なヘリックス構造のゲスト誘導的な巻き戻りが活性のオンオフと相関しているようである。
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