研究概要 |
T4ファージテイルリゾチーム(gp5)は生合成後まず3量体を形成し、その後Ser351とAla352の間でプロセッシング、即ち切断が起こる。Ser351を7種類の他のアミノ酸、即ち、Leu, Ala, Lys, Glu, Thr, Tyr, Hisに部位特異的置換を行った変位テイルリゾチームを発現させたところ、AlaおよびHis変異体が若干切断された以外はプロセッシングが全く起こらないことが分かった。このことは、プロセッシングが基質特異性の極めて高い大腸菌プロテアーゼによって行われていることを示している。この変異体のうち、Leu変異体をPurdue大学の金丸周司に依頼してgp27とのヘテロ複合体として結晶化し、構造決定を行うことに成功した。その結果、切断の起こる野生株では見えなかった15残基が姿を現し、この部分は外部に露出していることが分かったほか、gp5が3量体ではリゾチーム活性を持たない理由が、プロセッシングによるものではないことが分かった。即ち、3量体ではリゾチームドメインの基質認識部位が隣のサブユニットからのペプチドによって占められているが、これは切断されていない変異体でも全く同様であった。従って、リゾチーム活性の抑制はプロセッシングを必要としないことが分かった。驚いたことに、切断の起こらなくなった変異体も感染には全く支障がなかった。このことは、いままで活性の発現に必須であると思われていたプロセッシングが実は必須ではないことを示している。なお、変異体は感染能に関して野生型に較べて若干低温感受性がある。
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