研究概要 |
ヒスチジンは5-ホスホリボシル1-二リン酸から複雑な過程を経て合成され,初段階の反応は最終生成物であるヒスチジンによって阻害される。またヒスチジン合成系は9つの反応からなり,7つ酵素タンパク質によって触媒される。まず7番目の反応を触媒するPLP酵素(大腸菌由来のヒスチジノールリン酸アミノ基転移酵素)を最初のターゲットタンパクとして選び、この酵素のクローニング・大量発現・結晶化を行い,野生型酵素の構造決定に成功した。この酵素に基質であるヒスチジノールリン酸を加えて結晶化し、構造解析をおこなったところ、反応中間体であるケチミン構造をとらえることができた。また、もう1つの基質であるグルタミン酸に関しては、補酵素とのアナログを用いることにより基質の認識機構を明らかにした。引き続き、ヒスチジン生合成とプリン生合成の分岐点に位置する反応を触媒するImidazole glycerol phosphate synthase (IGP synthase)のクローニング、大量発現・結晶化を行い,野生型酵素の構造決定に成功した。この酵素はいわゆるグルタミンアミドトランスフェラーゼ(GnAT)群に属する酵素であり、グルタスナーゼサブユニットとシンターゼサブユニットという2つの異なるサブユニットからなるヘテロダイマーである。IGP synthaseのシンターゼサブユニットは典型的なTIMバレル構造であり、バレルの中を生成したアンモニアが移動し、基質である[(5'-phosphoriburosyl) formimino]-5-aminoimidazole-4-carboxamide ribonucleotideと反応してimidazole glycerol phosphateと5-aminoimidazole-4-carboxamide ribotideを生成することがわかった。
|