研究概要 |
膜と細胞骨格の制御因子として注目を集めているδ型ホスホリパーゼC(PLCδ1)の活性化と、それにともなう膜直下構造の変化について解析した。 1.自由生活アメーバA. proteusの細胞運動に関わるホスホイノシチドシグナリングについて、原子間顕微鏡と近接場顕微鏡による細胞膜ルーメンの観察、蛍光性PtdIns(4,5)P2やIns(1,4,5)P3の細胞内へのマイクロインジェクションにより、以下の点を明らかにした。アメーバは仮足を伸長させることにより貪食と移動を行うが、この細胞運動では,仮足先端のPtdIns(4,5)P2がホスホリパーゼC(PLC)により分解されることが重要であり、仮足伸張は、PtdIns(4,5)P2を介して膜に結合していたアクチン繊維の解離によって惹起され、産生されたIns(1,4,5)P3によるCa^<2+>動員を介したPLC活性化の正のフィードバックにより維持される。 2.PtdIns(4,5)P2とPLCδ1との結合にクリティカルであるプレクストリンホモロジー(PH)ドメインとの相互作用を固体NMRにより解析した。脂質ベジクル結合によってPLCδ1-PHの局所立体構造は変化し、ドメイン側方にあるαヘリックスが脂質の疎水的な環境により親和性をもつことが判明した。 3.PLCδ1結合タンパク質p122RhoGAPが、細胞膜マイクロドメインのひとつであるカベオラに存在することを明らかにした。その局在には、p122RhoGAPのSTARTドメインがコレステロールと結合すること、またおそらくGAPドメインがカベオリン1と相互作用することが重要である。
|