研究概要 |
ヒト黒色腫細胞、ヒト繊維肉腫細胞から単離された、ヒト由来自己分泌型がん細胞運動刺激因子(human autocrine motility factor,以下hAMFと略)は、細胞外に分泌され、産生細胞自体の運動を刺激する、ホモ2量体(2x558アミノ酸残基)サイトカインである。本研究では、がん転移抑制剤の合理的デザインへ向けた手掛りを得るため、hAMFとその阻害剤との複合体の立体構造、およびhAMFの受容体である、hAMFRの立体構造を解明することを目指している。 蒸気拡散法により、ポリエチレングリコール8000を沈殿剤として用い、組換え型hAMFの結晶化を行った。細い柱状結晶が再現性良く得られるようになった。筑波のフォトンファクトリーにおいて、回折強度データの収集を行い、1.9Å分解能までの回折強度データを得ることができた。得られた結晶の空間群はP2_12_12_1、格子定数はa=80.58Å,b=107.4Å,c=270.7Åであり、結晶の非対称単位中には4サブユニット(2分子の2量体:2x2x558アミノ酸残基)が含まれていた。結晶の溶媒含量は、47%であった。ウサギ由来ホスホグルコースイソメラーゼをサーチモデルとした分子置換法により位相を決定し、1.9Å構造精密化を行った。次いで、AMFとAMFのサイトカイン活性を阻害する阻害剤との複合体の立体構造を解明するため、数種の阻害剤との複合体結晶の調製を試みた。その結果、エリスロース4リン酸(E4P)との複合体結晶の調製に成功し、hAMF/E4P複合体の立体構造を2.4Å分解能で決定することができた。 マウスAMF(mAMF)に関しても、大腸菌を用いた組換えタンパクの大量調製を行い、結晶化条件の探索を行った。その結果、mAMFに関しても、阻害剤フリーおよび数種の阻害剤存在下で、X線結晶構造解析に使える単結晶を得ることに成功した。
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