研究概要 |
前年度に引き続き,海馬CA3領域の苔状線維シナプス前終末の各々において,Ca^<2+>チャネルサブタイプの分布が異なるとする仮設を検証した。Ca^<2+>感受性蛍光デキストランをCa^<2+>非感受性蛍光デキストランと同時に苔状線維終末に取り込ませた。共焦点顕微鏡下にCa^<2+>非感受性蛍光デキストランにより単一苔状線維シナプス前終末を同定した。緩衝能の弱いSr^<2+>で細胞外Ca^<2+>を置き換えて,活動電位にともなう細胞内Sr^<2+>濃度応答をCa^<2+>感受性蛍光デキストランで測定した.Ca^<2+>感受性蛍光デキストランとしてOregon Green 488 BAPTA-1デキストランを用い,Sr^<2+>に対する感受性を計測し,解離定数値(K_D)は3.18μMであった。Ca^<2+>チャネルサブタイプ特異的なアンタゴニストについて,それぞれのサブタイプ特異的に作用する最大効果濃度を検討し,ω-agatoxin IVA(P/Qタイプ)0.5μM,ω-conotoxin GVIA(Nタイプ)1μM, SNX-482(Rタイプ)1μMを得た。これらはそれぞれのサブタイプをほぼ完全に抑制するにもかかわらず,ω-agatoxin IVA, ω-conotoxin GVIA, SNX-482のすべてに非感受性のSr^<2+>濃度応答がみとめられ,これはLタイプ特異的なBay K 8644により促進された。単一シナプス前終末のあるものには,P/Q, N, R, Lのすべてが分布していたが,P/QとLのみが分布しているものも認められ,サブタイプの分布は終末ごとに大きく異なることが明らかになった。苔状線維を含む海馬神経回路機能の可塑性において,シナプス前終末個々において固有のCa^<2+>チャネルサブタイプの分布を有していることが重要な役割を果たしていることが示唆される。
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