研究概要 |
低分子量G蛋白質Rhoの標的蛋白質であるmDiaおよびmDiaの下流の新たな情報伝達経路の解析により、細胞運動の時・空間的制御機構の解明を目指し、神経の成長円錐の形態維持・軸索伸長過程の検討を行っている。1)Yeast two-hybrid法により得られたmDia結合蛋白質の一つは、中枢神経系の発生に重要な核内転写調節蛋白質Pax6であった。非神経細胞においてmDiaが核内へ入りPax6と結合しその転写活性を抑制すること、小脳顆粒細胞の初代培養系においてmDiaの一過性強制発現によって内因性のPax6の発現が変化することを見いだした。現在、発生初期脳におけるmDiaとPax6のcolocalizationの検討を開始したところである。2)さらに小脳顆粒細胞の初代培養系において、軸索伸長に対してmDiaが促進的に作用することが明らかとなった。この結果は、これまでRhoファミリー蛋白質では、Rac, Cdc42が成長円錐の伸展を、RhoおよびRhoキナーゼが成長円錐の体縮を起こすという数々の報告とは相反するものである。このことはRhoの下流における時・空間的制御機構およびRhoファミリー蛋白質の協調作用の存在を示唆し、これによって軸索伸長巧妙に制御されていることが考えられる。最近の研究で、これをうらずけるような、Rho-mDia-Srcキナーゼ-DIP(新規mDia結合蛋白質)(Mol. Cell,5,2000;JBC,276,2001)の下流の新たな情報伝達経路を見いだし、DIPも軸索伸長をおこすことが判明した(論文投稿中)。
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