研究課題
特定領域研究
1.テロメア結合因子TRF1を基盤とした哺乳類テロメア構造の維持機構の解明TRF1をコンディショナルに欠損させることが出来るマウスES細胞の解析から、TRF1はテロメア配列の長さの調節だけでなく、細胞の増殖や機能的テロメア構造維持に重要な役割を持つことを示してきた。次に、TRF1欠損によりテロメア局在が低下あるいは消失するTRF2,TIN2,PTOP, POT1などのテロメア結合分子が、TRF1欠損により観察される細胞増殖阻害や染色体の不安定性と如何に関わっているかを明らかにすべく、解析を進めた。その結果、TRF1欠損によって誘導されるTRF2のテロメア局在低下はTRF1の消失によるTIN2のテロメア局在消失によって引き起こされていること(つまり、TRF2のテロメア局在の一部はTIN2によって調節されていること)を明らかにした。さらに、TRF1欠損によるテロメア領域でのH2AXのリン酸化(γH2AX)の誘導は、PTOP-POT1のテロメア領域への局在不全によって引き起こされていることが示唆された。一方、TRF2やTIN2- PTOP-POT1のテロメア局在回復では、TRF1欠損の誘導で観察されるようになる異常なテロメアシグナルの出現は抑制されなかった。以上より、TRF1による機能的テロメア構造維持機構には、TRF2、TIN2- PTOP-POT1をテロメアに安定に集積させることによる経路とTRF1が独自で制御している経路の2つが存在することが示唆された。2.ALT機構におけるRad54の役割これまでの解析から、哺乳類のテロメラーゼ非依存的なテロメア維持機構(ALT機構)には、相同組換え機構が重要な役割を持っていることが示唆されてきた。今回、相同組み換えに機能する分子Rad54を欠損させたALT細胞におけるテロメア維持を解析した。その結果、Rad54が欠損したALT細胞では、一般的なDNA相同組換え修復能が低下していたにもかかわらず、ALT機構の阻害は観察されず、ALT細胞特異的に観察されるテロメア部分での姉妹染色分体間での交差反応も存在していた。以上の結果より、テロメア部分でのテロメラーゼ非依存的テロメア維持には、Rad54とは非依存的なDNA組換え修復機構が中心的役割を持つことが示唆された。
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