研究課題
特定領域研究
発生システムの進化を昆虫、脊椎動物、棘皮動物,植物について研究した。野地らはコオロギ発生システムがコーダルなどを介した後部からの前後軸パターン形成であることを発見した。コオロギ発生システムは、ショウジョウバエよりも祖先的なので,コオロギ型発生システムから、前部からのパターン形成であるショウジョウバエ型に進化したと推測された。佐藤らはカタユウレイボヤを用いて、転写因子およびシグナル伝達分子の遺伝子の発現パターンの網羅的記載、cDNAの塩基配列を決定した。これらにより、遺伝子カタログがほぼ完全に整備され、ホヤは脊索動物の中では最も基礎情報の整備された動物となった。倉谷らはスッポンとニワトリの発生システムを比較し、カメ独特の肋骨伸長を促す要因とされてきた甲皮隆起が、他の羊膜類における後期咽頭胚の体壁構造、ウオルフ隆起とは異なることを示した。脊椎動物胚の筋節に発現する制御遺伝子群をスッポンより単離し、Myf5にはニワトリ、マウス、アフリカツメガエルにはない特徴的な4アミノ酸の欠失が存在し、カメの系統特異的に生じた分子進化であることを示した。赤坂らは棘皮動物としてウニ、棘皮動物の中でも最も起源が古いウミユリ類のトリノアシとニホンウミシダを用いた。ウニ胚小割球の運命決定機構の解析、形態形成にかかわるTbx遺伝子のクローニング、胚発生における発現パターンを解析した。長谷部らは花器官形成遺伝子の進化について調べるために花器官を形成しないコケ、緑藻類におけるMADS-box遺伝子を解析してきた。その結果、これらの植物ではMADS-box遺伝子は卵、精子形成時に発現しており、元来生殖細胞分化に関わっていたMADS-box遺伝子が遺伝子重複により数を増やし、増えた遺伝子が一方で元来の機能を維持しつつ、他方で機能分化することにより花器官形成遺伝子が進化したと予想された。
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