研究概要 |
1.Msx1,Msx2によるプロニューラル遺伝子群およびニューロジェニック遺伝子群の発現調節 プロニュラル遺伝子群Mash1,Math1,Neurogenin1,Neurogenin2,NeuroD, E2Aの発現をRT-PCRおよびin situ hybridizationにより調べた。Msx1,Msx2ダブルノックアウトマウスでは、Mash1およびMath1の発現の減少が認められた。一方、ニューロジェニック遺伝子群Notch1,Hes1,Hes5,Id1,Id3では、野生型と比較してダブルノックアウトマウスではいずれの遺伝子の発現量およびパターンには差は認められなかった。Msx1,Msx2は、標的遺伝子を介して間接的にMash1, Math1の発現を促進することが考えられた。 2.神経堤細胞の分化におけるBMP2,4→Msx1,Msx2→Mash1というシグナル伝達経路 胎生10.5日の野生型マウスおよびMsx1,Msx2ダブルノックアウトマウス胚から神経管を分離・培養した。培地にBMP2を添加すると、野生型ではMsx1,Msx2,Mash1の発現が増加したが、ダブルノックアウトマウスでは、Mash1の発現増加は認められなかった。Msx1,Msx2は神経堤幹細胞においてBMP2,4により発現誘導され、Mash1の発現誘導に働いていることが考えられた。 3.Msx1,Msx2による細胞周期関連蛋白cyclin D1の発現調節 Msx1,Msx2ダブルノックアウトマウスに認められる神経上皮細胞数の減少より、神経幹細胞の増殖障害が疑われた。そこで、胎生10.5日のダブルノックアウトマウスの頭部神経管背側よりRNAを抽出し、RT-PCRによりcyclin D1の発現量を半定量した。ダブルノックアウトマウスの頭部神経管背側ではcyclin D1の発現低下が認められ、Msx1,Msx2はcyclin D1の発現調節に働いていることが考えられた。
|