研究概要 |
非摂動論的な取り扱いが必要な,強結合ゲージ理論に対して格子ゲージ理論と有効場理論に基づいて解析的なアプローチで,理論の位相的側面や構成的定式化,超対称性,クォークの閉じ込めなどの理論の非摂動的な側面の理解を試みた. 格子ゲージ理論のアプローチでは,特にGinsparg-Wilson関係式を満たす格子Dirac演算子に基づくカイラル対称な格子ゲージ理論について研究,格子ゲージ場の配位空間の位相構造を明らかにし(藤原),U(1)カイラル格子ゲージ理論の構成法を簡単化した.これを応用してSU(2)xU(1)電弱格子ゲージ理論におけるフェルミオン測度を具体的に構成した(菊川).また,2次元N=(2,2)超対称Yang-Mills理論など低次元超対称ゲージ理論の格子定式化への一つの道筋を提案した(鈴木). 格子ゲージ場の位相構造について理解するために任意の偶数次元のトーラス上でのDirac演算子のO-モードの構成とその性質の研究を連続理論に基づいて行った(藤原).この問題が興味あるのはねじれた周期条件を満足する波動関数をトーラスの幾何学的性質に着目して解くことができる点にある.われわれは,特にDirac演算子のO-モードについて研究し,この問題が一般的に解決できることを確かめた,結果は,指数定理と矛盾せず,一様磁場では磁場の符号に応じて決まる特定のカイラリティの状態のO-モードが指数定理によって記述される数だけ現れる.その縮重度は磁気的平行移動対称性から完全に理解できる. 有効場理論に基づくアプローチでは,Yang-Mills理論におけるCho-Faddeev-Niemi分解の研究を行い,非線形変数変換に基づく再定式化を用いて,クォーク閉じ込めのメカニズムを明らかにした(近藤)。
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