研究概要 |
最近のゲノム研究の進展により、我々はある生物種のゲノム上に存在する遺伝子をゲノム配列から予測出来る様になったが、遺伝子の発現制御に関しては未だ予測出来ない。そのためには数多くの遺伝子の発現制御領域の解析が必要だが、その際、同じ組織で、同じ時期に、類似したパターンで発現する遺伝子のシリーズについて解析し、それぞれのゲノム上の配列を比較することで効率的にゲノム配列と発現制御の関係を明らかに出来ると考えられる。本研究では、ショウジョウバエの成虫肢形成過程で遠近軸に沿って領域特異的に発現する遺伝子の発現制御領域の同定及び比較検討を試みた。既に単離・解析を進めてきたホメオボックス遺伝子Bar、a1、c11の制御領域について、それぞれ約8Okb、25kb、25kbのゲノム領域を解析する事により、現在までに約1kb,500bp,300bpにまでその必須領域を限定する事が出来た。これらの領域には共通してホメオドメイン・タンパク質の結合コンセンサス配列のコアであるTAATモチーフが密集していた。また、Barの制御領域は約450bpの肢原基で発現するのに必須な部分とその部分の活性を肢原基の特定の領域に限定するのに必要な部分の二つの部分からなっている事も分かった。さらに、制御領域を解析する候補を増やす為に、ショウジョウバエのホメオボックス遺伝子のうち、肢原基での発現が知られていないすべての遺伝子(75遺伝子)についてin situ hybridizationによりmRNAの発現パターンを調べた。その結果、Barやa1,c11と同様の領域で発現するものや、Barよりもさらに近位部側で発現するもの等、Bar, a1,c11と同様に遠近軸に沿って領域特異的に発現する遺伝子が少なくともつ新たに同定できた。
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