研究概要 |
今年度は、新潟大学医学部の協力を得、円口類の一種、カワヤツメLampetra japonicaを捕獲、人工授精を行って胚サンプルの確保、成体の脳の採取、ならびに、アンモシーテス幼生の脳の採取に成功した。とりわけ、ライブラリー作製に十分なほどのヤツメウナギ幼生脳の採取はこれまで試みられたことはなく、十分なサンプルを手際よく採取することができるという点で、我々の新潟における資料採取の重要性を再認識した次第である。これらについてそれぞれ、cDNAライブラリーを作製、その品質が高いことを確認した上で、ランダムシークエンスを行い、冗長性も含めた上で、数千から10,000クローンの配列を記載した。これらのうち、脳のESTについては、三島遺伝学研究所との共同作業で進めている,このデータは、本研究とは別のプロジェクトである脳の発生過程や変態における遺伝子発現プロファイルの記載に用いられる他、顎顔面形成に機能することの知られる遺伝子の探索にも用いられる。とりわけ本研究について意義深いESTは言うまでもなく、咽頭胚期のcDNAに由来するESTであり、このとき、顔面間葉のパターニングに関わる遺伝子の多くが発現すると見られる。現在までに得られたクローンについては、三叉神経(顎口類では顎の運動、知覚に機能)のパターニングに関わるとおぼしきクローンや、神経堤細胞の特異化や間葉のパターニングに関わる遺伝子の探索、同定、そして発現解析を行っているが、本来の目的は咽頭胚ライブラリーESTよりcDNAチップを作成し、顎顔面形成に機能する遺伝子を選択的にピックアップすることである。このためには、レチノイン酸の作用を及ぼすことで、咽頭弓の間葉をすべて欠失した胚を作製することが必要であり、それについてはすでに記載したとおりであるが、今回、その実験の再現性をチェックし、異なったレチノイン酸濃度、異なったステージにおける投与の胚、並びにそれらに由来するmRNAサンプルの取得も行った。
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