研究概要 |
染色体バンドに代表されるようなゲノム上の大規模な不均一性の実体やその機能を分子レベルで解明することは、今後のゲノム解析および医学研究において重要な基礎知見を与える。この目的を遂行するため、ヒト21番染色体長腕(35Mb)および11番染色体長腕(80Mb)の全域を対象に、約450箇所のSTS部位のS期内複製時期を塩基配列レベルで測定し、詳細な複製時期地図を作成した。11qおよび21qの解析から、GC含量の区分境界と複製時期の転換部位との間に密接な関係があることが判明した。S期前半から後半への複製時期の転換部位には腫瘍関連遺伝子や、家族性アルツハイマー病と関係した遺伝子であるAPPや家族性ALSの原因遺伝子のSOD1、てんかん症と関係したGRIK1などの脳神経疾患遺伝子類も存在していた。複製時期の転換領域およびその周辺領域は、SNPの高頻度領域とも関係していた。11qおよび21qについて、マウスゲノムと比較し、染色体レベルで相同性の切り替わる部位を特定したところ、これらの部位は複製時期の転換領域またはその近傍に集中していることが判明した。これらの結果から、複製時期の転換機構は、ヒトの疾患およびゲノム進化の分子機構と密接に関連しており、ゲノムに多様性をもたらす原因のひとつであると推定した。詳細については、Hum.Mol.Genet.(Watanabe et al., Vol.11, 13-21, 2002)に発表した。
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