研究概要 |
(1)生検材料から得られる微量のtotal RNAよりmRNAを特異的にlong distance PCRにより増幅するSMART PCR法を導入し、lugのtotal RNAから数十microgramのmRNA由来のcDNAを得ることが可能となった。さらに、suppressive subtraction法による高効率のsubtraction cloningを行い、疾患特異的発現をする遺伝子のPCR産物を得ることができた。 (2)肝癌cDNAと周囲非癌部cDNAをsubtractionすることにより、FAK, GS, DCC, Gia, PGC, decorinなどの遺伝子の肝癌における特異的な発現変化を見いだした。 (3)大腸癌から周辺正常大腸粘膜のsubtractionでは、同様にCEA, NCA, Bub1, Maspin, T0G, GABA-R, dkk4などの遺伝子の発現を確認した。 (4)慢性C型肝炎および自己免疫性肝炎ではchemokineであるIP-10が特異的に発現していた。 (5)原発性胆汁性肝硬変では種々のミトコンドリア由来遺伝子が発現していることを見いだした。 最近、消化器疾患においても遺伝子発現変化の解析にmicroarrayが導入されているが、個々の解析結果は多様であり、これらの疾患の病態の全体像を解明しうる普遍的な結果は未だ得られていないと思われる。本研究で同定された遺伝子変化もこれらのmicroarrayでの結果とは異なるものもあり、当面、これらの解析手法は相互に補完的な情報をもたらすと考えられる。一方、本研究で慢性肝炎で発現が上昇していることが明らかとIP-10は急性C型肝炎動物モデルのmicroarray解析でも最も発現変化の大きな遺伝子の一つであり、病態の解明に重要な分子と考えらる。
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