研究概要 |
出芽酵母SGS1は、3つのヒトRECQ遺伝病原因遺伝子の相同遺伝子であり、ヒトと酵母で"ゲノム不安定化"という共通の表現型が観察される。本研究では、SGS1とその周辺で働く遺伝子群を同定し、解析する。当初計画としては、1)既に複数単離した"sgs1破壊株と合成致死となる変異株"の全ての原因遺伝子をクローニングする。2)合成致死株の致死性を多コピーで抑制する酵母ゲノム遺伝子を同定する。3)1,2)で得られた情報から遺伝子破壊株を作製し、sgs1変異との関係を決定する計画だった。 【13年度の成果】 1)についてはMMS4,SRS2遺伝子のクローニングに成功した。しかし、1)の一部の計画は中止した。2)についてはsgs1-srs2株の合成致死性を抑制できる多コピー抑制遺伝子のスクリーニングを行い、少なくとも現在までに"致死性を抑制する2つのゲノム断片(ZAP1〜TDH1,YDL381C-A〜EFT2)"を得ており、この中に複数含まれるどのORFが抑制活性を有するか同定中である。3)についてはmms4株の解析より、「MMS4はSGS1と同様にDNA組換え修復経路で働くこと」、「大腸菌のHolliday junctionを切断するRusAタンパク質をmms4株に発現させるとmms4株における修復欠損が回復すること」、「相同染色体間の組換えは、DNA傷害剤の存在下に、mms4株では野生型の5倍亢進されること」を明らかにした。つまり、Mms4は全ての組換えに機能を果たすのではなく、ある特定の基質中のHolliday junctionを切断することが重要であることを本研究で初めて示唆できた。
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