研究概要 |
現在までに数多くの生物において、全ゲノムのシークエンスが完了し、その網羅的解析が進行中である。光合成のモデル生物として非常に重要な位置をしめるSynechocystisにおいても、かずさDNA研究所によってその全ゲノムのシークエンスが完了し、ゲノムがコードする遺伝子の数はおよそ3,000と見積もられている。また、遺伝子の発現に関してもDNAマイクロアレイの利用によって網羅的な解析が可能となっている。ところが、これらの遺伝子の機能解析は、残念ながら網羅的とはとうてい言えない状況である。我々は、シアノバクテリアにおいては、光合成関連遺伝子だけではなく、ほとんどすべての代謝系の遺伝子の変異を、光合成色素であるクロロフィルの蛍光の変化としてとらえうることを見いだした。本研究では、この新たに開発された方法をシアノバクテリアにおいて確立し、これを用いて、シアノバクテリアのゲノムがコードする約3,000の遺伝子のすべての破壊株の表現型をゲノムワイドに解析することによって、シアノバクテリアのゲノム機能を明らかにすることを目的とする。平成12年度までに基本的な方法を確立したことから、平成13年度からは、実際にゲノムワイドな解析に着手した。トランスポゾンを用いたランダムな遺伝子破壊株を用いて網羅的な解析が進行中である。全ゲノム遺伝子の約2%にあたるコスミドを解析した現段階で116個のORFを対象に176個の変異体を作成・解析し、12個の蛍光変異体を取得した。これらの蛍光変異体は、7つのORFに変異が入っており、6つのクラスに分類できることがわかった。このことから、全ゲノムの解析が終了すれば、数百個の蛍光変異体が得られ、おそらく、最低限数十のORFが多数のクラスに分類できるのではないかと考えている。
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