研究概要 |
細胞性粘菌は生育、分化の各ステージで多様な細胞運動(広義の細胞運動:細胞質分裂、細胞移動、貧食作用、飲作用など細胞形態変化を伴う細胞機能やその前提となる細胞基質間接着、細胞間接着なども含めて考える)を示し、半数体で変異株が使える、タギング法や標的遺伝子破壊など正逆遺伝学的手法に優れるなどの利点から高等動物の細胞運動の最も有力なモデル真核微生物である。本研究は、2002年完了予定のゲノムプロジェクト及び筑波大田中可昌先生らによるESTプロジェクトの配列情報を利用し、上述の広義細胞運動の制御に関わる細胞性粘菌の低分子量GTPase、特にrhoファミリーGTPaseとその制御分子(rhoGDI, rhoGAP, rhoGEF)、さらにエフェクター分子(IQGAPなど)を網羅的に同定し、どの分子が細胞質分裂、どれが貧食作用といった細胞内機能のカタログ化、さらに各機能のシグナルカスケードの解明を目指している。昨年度は分子の同定とクローニング、細胞内局在の決定、遺伝子破壊株の解析を中心に行ったので、今年度はシグナルカスケードの解明に向けたタンパク質分子間相互作用の解析を酵母two-hybrid法を用いて行った。成果のうち大きいものとしては、現在知られる15種類すべての細胞性粘菌RhoファミリーGTPaseとの結合スペクトルを、RhoファミリーGTPaseのエフェクター分子であるIQGAP様タンパク質のGAPAとDGAP1、RhoGDIのホモログであるRhoGDI1について行い、細胞質分裂に関わるシグナル伝達経路の一部を明らかにした研究が挙げられる。さらに、IQGAP様タンパク質とアクチン結合タンパク質cortexillinの相互作用も明らかにし、それぞれの分子の相互作用部位も部分断片を用いた実験から特定した。なお、平成13年度のみでは、すべての分子間相互作用の検討が終了しなかったので、来年度も引き続いて同様の解析を行い、複雑なシグナル伝達カスケードの全貌を明らかにする予定である。
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