研究概要 |
ミトコンドリアは外膜,膜間部,内膜,マトリクスの4つの区画から構成され,サイトゾルで合成されたタンパク質は外膜のTOM,内膜の少なくとも2種類のTIMとよばれるタンパク質複合体の働きによりミトコンドリアに移行し,適切なミトコンドリア内区画に配置される。取り込まれたタンパク質は,マトリクスの分子シャペロンHsp70,Hsp60の働きで機能化する。本研究では,以上のプロセスの全体像を,全ミトコンドリアタンパク質の流れ(プロテインフラックス)として網羅的に解析し,フラックスの大きさと分岐を制御する因子とメカニズムの解明の突破口を開くことをめざした.具体的にはまず500〜1000種類存在すると考えられるミトコンドリアタンパク質の同定のために,(1)酵母細胞からNycodenz密度勾配遠心を用いて高純度のミトコンドリアを単離精製し,マトリクス画分について二次元電気泳動を行い,CBB染色した各スポットを限定分解→質量スペクトルで同定した(2)単離ミトコンドリアの内在性膜タンパク質画分について,一次元電気泳動後,二次元目に展開せずに,限定分解とMS-MS測定によりタンパク質同定を行った。(3)酵母細胞から全mRNAを単離,in vitroで翻訳しRI標識タンパク質を合成した。これを基質として,in vitroで単離ミトコンドリアへの取り込み実験を行い,プロテアーゼでミトコンドリア内に取り込まれなかったタンパク質を消化した場合としない場合の各々について,ミトコンドリアを回収して二次元電気泳動を行い,標識タンパク質のスポットを検出した。(4)(3)の実験を受容体Tom70の欠損株について行うことにより,Tom70に依存してミトコンドリアに取り込まれるタンパク質を網羅的に解析するために,受容体への結合が律速段階となるようなin vitroインポートの実験条件を確立した。
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