我々は、標的組み換えが容易なニワトリBリンパ細胞株、DT40で系統的にDNA修復に関与する既知の遺伝子をノックアウトすることにより、様々なDNA修復の機能に関与する各遺伝子の機能を解析した。このような遺伝学的解析のときに重要な点は表現型の解析であり、そして各表現型解析方法が分子レベルで結果的になにを解析していることになるのかを正確に把握することである。以下に我々の研究業績とを3項目にわけて説明する。 (1)相同DNA組み換えの機能解析 相同DNA組み換えは、生殖細胞が減数分裂するときに起ることが知られている。我々は細胞分裂のときにDNA複製に伴う損傷を修復するために、相同DNA組み換えがおそらく数十回/分裂の頻度で起っていることを示した。 (2)コヒーシンの機能解析 姉妹染色分体はM期の中期までコヒーシンと呼ばれるタンパク分子群により結合する(コヒージョン)。そしてコヒーシンのなかでScc1と呼ばれる分子が分解されることが引き金になって、M期は中期から後期に移行し、姉妹染色分体は互いに解離し紡錘糸によって各姉妹染色分体はそれぞれ両極に引かれていく。コヒーシンを構成する分子は、酵母の遺伝学的解析により数種類同定され、しかもヒトでも保存されていることがわかっている。我々は、Scc1が動物細胞でも同じ機能をもつか否か、そして姉妹染色分体間のコヒージョンが姉妹染色分体間でおこる相同DNA組み換えに重要な機能を持つか否かの2点を解明するためにScc1の条件欠損細胞(テトラサイクリンを加えた時にのみScc1が発現停止する)細胞を解析した。
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