研究概要 |
クリプトクロームは、Flavin Adenine Dinucleotide(FAD)を補酵素として持つフラボタンパクであり、バクテリアから植物、ヒトまで生物界に幅広く存在している。クリプトクロームは光回復酵素と呼ばれる光を受容する事により機能するDNA修復酵素に由来しており、何らかの光受容過程を含む生理機能に関与している事が示唆されていたが、高等動物においては概日リズムの制御を行っている事が明きらかとなった。概日リズムを作り出す生物時計は、PASドメインと呼ばれるタンパク間相互作用に関与するモチーフを持つ一群のタンパクから構成されている。クリプトクロームは、このPASドメインを持つ一群の転写因子に直接結合し、その活性を制御しており、生物時計の中心的役割りを担っている。本研究は、クリプトクローム及びそれと相互作用するPASドメインタンパク群の機能を、シアノバクテリア、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ(メダカ)、マウスにおいて包括的に解析しようというものである。本年度は以下のことを明らかにした。1)シアノバクテリアCRYタンパクの結晶構造を明らかにした。祖先タンパクである光回復酵素の結晶構造は既に明らかにされているが、CRYタンパクは光回復酵素とよく似た高次構造を取っていることが分かった。2)CRYタンパクはCLOCK, BMAL1の転写活性化を抑制することが知られているが、CLOCK, BMAL1のヘテロダイマー形成やヘテロダイマーの特異的DNA配列への結合を阻害することなく、CRY/CLOCK/BMAL1/DNAの複合体を形成することを明らかにした。3)機能の異なるCRYタンパク間でキメラを作成することにより、CLOCK, BMAL1と相互作用るドメインを決定した。4)ゼブラフィッシュ培養細胞において、光により特定のCry遺伝子の発現が誘導されており、この遺伝子産物が概日リズム形成に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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