研究概要 |
我々は分裂酵母の減数分裂初期に特異的に発現する遺伝子群(meu/eta)を独自に開発してきた段階的サブトラクション法を用いて50種類近くクローニングし、発現・機能の網羅的解析を行い、減数分裂を進めるプログラムの分子レベルでの解析を行ってきた。遺伝子破壊を行うことにより遺伝子破壊株では交差による組み換え頻度、および遺伝子変換による組み換え頻度がともに野生型に比べ減少すること、第一減数分裂で染色体の不均等分配がおきるような遺伝子が幾つか見つかってきた。これらはいずれも構造は新規であったが、出芽酵母の中にある相同染色体の対合と、相同染色体間でのシナプトネマ構造(SC)の形成を保証するとされる遺伝子に構造が類似の遺伝子(meu13^+)もあった。さらにこれら組み換えに関わる遺伝子の発現パターンはノーザン解析によると、いずれも窒素源枯渇による減数分裂開始から4時間後に劇的に転写誘導されたのち6時間後をピークとして8時間後にはmRNAはほとんど検出されないほどに分解されていた。これと類似の発現パターンを示すmeu遺伝子はまだ幾つか未解析のまま残してあることから、我々の作製してきた差分化cDNAライブラリーの中にはまだ沢山の未知の減数分裂特異的な組み換えに関わる遺伝子が含まれていると予想される。さらに我々はdmc1^+,meu13^+,checkpoint rad^+遺伝子を用いて減数分裂チェックポイント制御機構の解析を行ったのみならず、胞子形成を制御するmeu10^+,meu14^+,omt1^+,omt2^+,omt3^+遺伝子などについても詳細な機能解析を行ってきた。さらにins1^+, eta2^+と名づけた新規遺伝子を単離し、これらが多重転写(multiplex transcription)という新たな転写様式を示すことを発見した。
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