研究概要 |
下記のとおり、当初計画どおりほぼ進捗した。この過程で、ORC複合体形成制御に関する新たな知見が得られた。 a.PCNAをリガンドにしたカラムを用いてPCNAと相互作用する因子群の精製に成功した。また、抗ORC1抗体による免疫沈降により、ORC1とともに複合体を形成する因子の精製に成功した。 b.LC/MS/MSによる微量蛋白質同定システムを立ち上げ、従来のアミノ酸シーケンス法の2桁以上の高感度で蛋白質同定が可能なレベルに到達した(本学、小笠原教授と共同)。この方法を用いて30種類以上のPCNA結合因子の候補を同定できた。また、ヒト細胞においてORC1が他のORCサブユニットと複合体を形成していることを明らかにした。 c.ORC1の量、ORC複合体形成、核内局在が細胞周期で制御されていることを明らかにした。 d.他のサブユニットに対する抗体をもちいて、上記a, b, cと同様の解析を行い、抗ORC1抗体を用いた結果を確認し、さらに詳細な情報を得た。 e.ORC1特異的なリボザイムを細胞に導入することにより、この因子が細胞周期の進行に必須であることが示唆された。また、ORC1の発現量をコントロールできる細胞株を樹立し、ORC1の開始複合体形成に関わる機能を明らかにした。 本年度の助成により、LC/MS/MSを用いて直接的にORC複合体を直接的に検証できたこと、各サブユニットの挙動について同じ実験系で解析したことによって、動物細胞におけるORC複合体の形成機序とその役割をはじめて明らかにすることができた。一方、PCNAに関する研究は歴史が長く、相互作用因子とその生物学的な意義に関する数多くの知見が蓄積している。今回の解析により、報告があるPCNA結合因子のほとんどを同定することができ、本課題の信頼性、有効性を検証できた。また、新たなPCNA結合因子の候補が同定された。
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