研究概要 |
本研究の目的は,ゲノム配列情報から有意な高次規則を抽出できるアルゴリズムを開発するとともに,アルゴリズムの高速実行のためのハードウェアシステムを構築することである.本研究期間に,提案しているアルゴリズムである記号カーネルベース法とその高速処理のための推論ハードウェア(進化ハードウェア)の有効性を評価した.その結果以下の成果を得た. 1)20種以上の生物に対して記号カーネルベース法によるスプライス部位予測と規則発見を行った.その結果,カーネルに生物の進化距離が自動的に抽出されていることがわかった.また,生物種によっては,カーネルに2つの異なるモードがあることがわかり,Altemative Spliceにつながる規則性を見出した. 2)記号カーネル法をDictyostelium discoideum(細胞性粘菌)の発現規則発見に適用すべくその4つの発現期ごとの非転写領域ライブラリを作成した.今後,このライブラリに記号カーネルベース法を適用し発現規則の発見を行う.その基礎データ取得のために,得られた配列データベースの基本統計量(各塩基の含有率の移動平均値)を算出した.その結果,発現期Vにその他の発現期とは異なる移動平均値プロファイルが観測された. 3)昨年試作した進化ハードウェア要素試作機を基に,記号カーネルベース法を高速処理するための遺伝情報規則推論システムプロトタイプを完成した.プロトタイプは7個の30万ゲート相当の書き換え可能集積回路をベースに開発した.スプライス部位予測問題を対象にその推論速度を測定し,1μ秒以下で実行できることがわかった.これにより,ミリオン推論/秒の遺伝情報規則推論が可能となる見通しを得た.
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