研究概要 |
本研究はP/Q型Caチャネルをコードするaipha1A遺伝子の変異に起因する発作性失調症2型(以下EA2)のモデルマウスの作製を目的とし、それを用いたEA2発症機序の解明およびその遺伝子治療法の開発を目指すものである。まず、すでに我々がクローン化した正常ヒト由来alpha1A cDNAにPCRを利用してEA2変異(C4110T, R1279がStopコドンになる)を導入した(EA2-alpha1A)。このEA2-alpha1A cDNAをマウスalpha1A遺伝子の内在性プロモーターで発現させることを目指し、Cre-lox系を利用してマウス胚幹細胞(ES細胞)のalpha1A遺伝子エクソン1に挿入することを試みた。これは、変異導入lox配列(lox71およびlox66)間のCreによる組換え反応は、本来の認識配列であるloxP-loxP間の組換え反応にくらべて逆反応が起こりにくいということに基づく方法で、染色体上の特定の位置に外来遺伝子を効率的に挿入できると考えられる。lox66,EMCV由来IRES, EA2-alpha1A cDNA, polyAシグナル、ハイグロマイシン耐性遺伝子カセット、を含むノックインベクターを作製し、これをマウスalpha1Aエクソン1にlox71配列が挿入されたES細胞(BI-176)にCre発現ベクターとともに導入した。その結果、ハイグロマイシン耐性株の約30%という高い効率で目的のEA2ノックインES細胞が得られた。そして常法に従いEA2ノックインマウスを作製した。また、親株であるBI-176細胞に導入した変異はalpha1A遺伝子のヌル変異であると期待されるので、EA2変異との比較を可能にするためBI-176由来マウスも作製した。現在はこれらのマウスの交配によりホモ接合体が得られることが判明した段階であり、今後それらの行動学的、病理学的な解析をすすめる予定である。
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